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日本 / TULIP
火薬バカ一代 ★★★ (2022-08-22 21:52:50)
その昔、学校のキャンプファイヤーで歌った“心の旅”の印象から、長らくフォーク・グループと認識していたチューリップに対する印象を改める切っ掛けとなった、’75年リリースの6thアルバム。
日の丸を想起させる示唆に富むアートワークが象徴する通り、当時の日本の様々な情景や日本人の国民性をテーマに据えたコンセプト・アルバムの体裁が取られている本作は、THE BEATLESからの影響を基調に、70年代ロックの歯応えや実験性、それにメンバー全員が歌える強みを生かした美しいボーカル・ハーモニーとに彩られ、単純にフォークというジャンルでは括りきれない多様性に溢れたサウンドが展開されています。メロディはフォーク由来の暖かみや親しみ易さを感じさせるのに、綴られている歌詞は敗者たちの物語で、案外皮肉げだったり辛辣だったりするコントラストはいかにも70年代の作品だなぁと。
重たげなリズム・セクションに哀愁のメロディが乗るOPナンバー“せめて最終電車まで”や、財津和夫の情感溢れる歌声が憂いを湛えた曲調を引き立てる“都会”等にもグッときますが、やはり本編のハイライトはメンバーが総力を挙げてレコーディングを行ったという10分以上に及ぶ組曲“甲子園”の存在。甲子園初出場を決めたある高校球児を主人公に、高揚感に満ちた序盤から、重苦しい“君が代”のメロディと共に苦い後味を残して締め括られる結末に至るまで、様々な場面転換が盛り込まれたプログレッシブ・ロック的味わいも感じられる名曲に仕上がっていますよ。
ちょうど甲子園大会が盛り上がっているこの時期に聴くのもオツな1枚ではないでしょうか。
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