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Doo-Bop / MILES DAVIS
帰ってきたクーカイ ★★ (2015-02-23 00:34:51)
マイルズ・デイヴィスの最晩年のスタジオ録音を主体に構成されたアルバム。録音は'91年で、ラッパーのイージー・モー・ビーがプロデューサーとして呼ばれ、サンプリングとプロデュースを行っている。 マイルズはイージー・モー・ビーに「いつものようにやってくれ」と言ったとされ、イージー・モー・ビーもそれに応えた。ゆえに本アルバムに参加しているのは、マイルズとイージー・モー・ビー、それにキーボーディストの3人のみ。楽曲のほとんどはサンプリングとマイルズのトランペットで構成されている(一部の曲にイージー・モー・ビーのラップがのる)。
本アルバムを評価する上で、とりあえず“マイルズ・デイヴィスのラスト・レコーディングが収められている”という点は、あえて評価対象の枠外に置いておく。というのは、それをポジティヴに評価すると、「マイルズは最後まで旺盛な創作意欲と、新しい音楽に対する強い興味を失わず・・・」みたいなコメントを書きたくなってしまう(いや、書いたって悪い事ではないのでしょうが)。また、逆にネガティヴに捉えると「その演奏におけるテクニックの劣化は、全盛期のそれと比較するに疑いようもなく・・・」みたいになってしまうかもしれない(書かないけど)。
本アルバムの評価基準は、クールか、否か、の一点だけだ。マイルズもそれ以上の物差しは必要としていないだろう。だって、これを吹き込んでいる時に、「これは俺の最後の作品だから」とは思っていなかっただろうから。
それで、本アルバムはクールである。
今聴いても、古臭いように感じない(多分、ラップやヒップ・ポップの方法論も、この当時と現在とで大きく変わっていないだろうし。・・・いや、最近のは全く知りませんが、多分)。マイルズが部屋の窓から聴いていた人々の雑踏や道行く自動車の音、あるいは夜のバーでの様々な呟き、会話。それらの持つ都会ならでは雰囲気を、イージー・モー・ビーが上手くサンプリングで表現し、マイルズが(決して饒舌ではないし、元気溌剌でバリバリ吹く、というのでは全然ないけれど)トランペットをのせる。
マイルズの目論見は達成されたように思える。それもかなり格好良く。
→同意