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Krallice / KRALLICE
Usher-to-the-ETHER ★★★ (2008-09-28 21:31:00)
2008年発表のデビューアルバムですが…とんでもないバンドが出てきましたね…。トレモロ好きのトレモロ好きによるトレモロ好きのためのブラックメタル…そう表現したくなるくらい、トレモロリフの叙情性に拘りぬいた作品。これ、作品全体の9割以上がトレモロリフで覆われてるんじゃないでしょうか。
この作品はパートによってはプリミティブな攻撃性や邪悪さが垣間見えたりもするんですが、一般的なメタルのマッチョなイメージからは100万光年離れたような(笑)清浄で儚い雰囲気はALCESTに通じる物があると思います。ALCESTがシューゲイザー的ギターノイズやアンニュイな普通声、アコギの導入など色々な手段を駆使して情景を描いてるのに対し、このバンドはキーボードやリードギターが部分的に入るくらいで、殆どトレモロリフの絡みだけで情景を描いてるのが大きな違いですね。
そのメロディも絶品で、部屋で目を閉じて聴いていると、どこか抽象的な場所にいるような感覚に襲われてしまうほど。
また、他のバンドと比べるとトレモロリフの音色が全体的にちょっと高めで、時々他で見られない高音が出てくるのも特徴ですね。この音作りが実に効果的で、トレモロの音がくっきり聴こえるだけでなく、胸を掻き毟られるような儚さがより強調されているように思います。
調べてみたら、Colinは特殊な、音域の広いギターの使い手として有名で、Mickも高い技巧を持つギタリストとして高く評価されてるらしいですが、この二人だからこそなしえた音なのかもしれません。とにかくトレモロリフが上手く使えば、人の心にどれだけ響く音色なのかを心底から理解している人たちが作ったようなブラックメタルを展開してます。
ちなみにヴォーカルは鬱ブラっぽい絶叫で真に迫ってはいるんですが…この音楽性ならNeige(ALCEST)やKanwulf(NARGAROTH)くらいの壮絶な歌い方が出来るヴォーカルが欲しかった所。流石にそれは贅沢な望みという気はしますが。
この作品、BURZUMや初期GORGOROTHを引き合いに語られているようですが、私的にはこの作品は新世代のブラックだと思います。少なくとも、ここまでトレモロリフのメロウさに焦点を当てたアルバムを他に知らないです。
NARGAROTHの3rdは少し近いですが、向こうはこっちと違いノイジーな音質も使って情景を描写してますし。ブラックのトレモロリフに惹かれてる人はマジで買ったほうが良いですよ。
ALCEST同様、ブラック筋以外からも評価されてもいい神盤だと思います。
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