この曲を聴け! 

Kolossus / KEEP OF KALESSIN
Usher-to-the-ETHER ★★★ (2008-06-11 18:54:00)
2008年発表の4th。

このバンド、AttilaとFrostを起用した復活ミニを出してからは、ブラック的なカルトなアトモスフェアよりもメタリックなかっこよさ、質の高さを重視したブラックメタルをやってますが、今回もその流れを汲む作風。

前作もバラエティに富んだブラックを聞かせてくれましたが、ブラック由来のエクストリームな曲、キーボードとアコギの絡むドラマティックなエピックチューン、ミッドテンポ中心の重厚なゴシックまで曲のバリエーションは更に増えているという印象。ブラックの禍々しく不健全な雰囲気は希薄で、ブラック好きからの賛否があるのも頷けますが、このストレートにかっこよさの伝わるスタイルはメロデス好きを始め、ブラックのファン以外のメタラーにも広く支持を受けられるのではないでしょうか。

しかし、相も変わらずObsidian氏はぶっ飛ばしてますね…(笑)。ブラックらしい繊細なトレモロリフ、メロデスにも通ずるグルーヴとメロディを同時に練り込んだリフ、ヘドバンを誘発するリフに泣きのギターソロ、叙情味溢れるアコギフレーズに至るまで、何をやっても際立ってしまってる感じ。この人って本当に何でも出来るんだなぁ…。

それでいて自慰的なテクのひけらかしが感じられないのもまた凄い。インタビューで「一つの良いリフを書くのは簡単だが、一つの良い曲を作るのは難しい(大意)」的な事を言っていたし、プレイヤーとしてだけではなく、曲全体を見渡せるコンポーザーとしても素晴らしいギタリストと言えるでしょう。

前作のレビューでは「Euronymousを超える逸材かも」的な事を言ったんですが、この人の資質ってそうしたカルトな支持を集めるタイプの物ではなく、むしろCOBのAlexiやARCH ENEMYのAmott兄弟などのいわゆる「ギターヒーロー」と呼ばれている人たちと同様に、メタルとしてのかっこよさを体現するものであるのかもしれないと思いました。

そのうちYOUNG GUITARとかに載ってもおかしくないくらいメジャー志向で、しかもセンスある人だと思います…それだけに、日本盤の発売すらされていない、国内でのマイナーな立ち位置が惜しすぎる…。まあ、このサイトでも現時点で前作のレビューが15件あるし、注目度は上がってるのかもしれませんが。

また、HellhammerやFrostと並んで語り草になりそうなVylのドラムや、ヴァイキング的な野蛮さ、勇壮さを湛えたThebonのヴォーカルなど、ギター以外のパートも素晴らしいですね。
特にヴォーカル、普通声で歌ってもリフの邪魔にならず、むしろリフの叙情性を際立てている辺りにセンスの良さを感じます。こないだ聴いたIN FLAMESは、一流のメタルながらそれが今一つ出来てなかったと思うので…。
このバンド、Obsidian.CとVylという二人の人外がいるせいで影が薄くなりがちですが、彼も実はかなり良いヴォーカリストなのでは。

ただ、プロダクションは作風の割に少し薄味かも。
繊細でギターのフレーズを味わいやすいとは思うんですが、この作風ならIN FLAMES辺りのバンド並にモダンな音質にしちゃっても良かったんじゃないかと。

でもこのアルバム、なかなか気軽に聞けないんですよね…余りにもかっこいいので、聴いていると自分のテンションがトップギアに入ってしまうので、必然的に結構疲れてしまいます(笑)。まだ買ったばかりですが、疲れてるときは他のアーティストのもう少し緩めの作品を選んで聴いてしまいたくなる感じ。

…と、ここまでほぼべた褒めですが、点数をつけるなら88点くらいですね…。いや、アルバム単品なら90点代後半付けたいくらいですが、付属のDVDが国内機やPS2で見れないのは10点くらいマイナス。値段が多少高くなってるのは仕方ないですが、ジャケにPAL方式とかの表記がないのがむかつく。ドキュメンタリーとかインタビューとか、動いてる彼らが見れると思って、物凄く期待してたのに…。

悪態を付いてますが、DVDが国内機でも見れる日本盤が発売されたら多分買ってしまうと思う…それくらい好きなアルバムです。

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