スラッシュ・メタル史に名を刻むベテランを次々と招聘する東の「THRASH DOMINATION」の向こうを張り、メジャーで華々しい実績を残したわけじゃないけど、マニアのハートにはその存在がガッチリと刻まれているクセ者を続々来日させる西の「TRUE THRASH FEST」。 '15年にはオーストラリアのHOBBS’ ANGEL OF DEATHまでが参戦を果たし「本当に呼んだの?」「すげえな!」と感心させられたばかり。しかも今回その彼らが新作を発表してくれて感激も一入です。国内盤はRAZORのライブ盤との同時発売で、店で2作が隣り合ってディスプレイされているのを見かけた時は「おお、テイチクの『HOBBS’ ANGEL OF DEATH vs RAZOR』再現!」と、思わず前世紀にタイムスリップした気分になりましたよ。 首魁ピーター・ホブス(Vo、G)のルックスは流石に老けた…というか横方向にかなり膨張気味なれど、不穏な導入部から激烈な疾走を開始する⑩や、荘厳なドラマ性も漂う⑫といった楽曲からも明らかな通り、曲作りの腕前は錆びることなく健在。鋭利なGリフがササクレて刻まれるファスト・パートと、邪悪さを発散するスロー/ミドル・パートを組み合わせ、そこに濃厚なアングラ臭を振りかけたような初期SLAYER直系のイーヴルなスラッシュ・サウンドは、デビュー当時の面影をそのまんま受け継いでいます。 時に炸裂するブラスト・ビートや、痙攣気味に刻まれるGリフといった北欧ブラック・メタル風味は新味と言えますが(BとDsはそっち系人脈からのヘルプ)、元々アンチ・クライスト・カラーも打ち出していたバンドゆえ、違和感なくハマっていますよ。 初来日を果たした喜びの表れか、漢字をあしらった裏ジャケにも実にほっこりさせられる1枚でした。