数々の名作・名曲を世に送り出してきたシンガー/ソングライターのスタン・ブッシュと、AXE、GUILD OF AGES、EDGE OF FOREVER等の活動で知られるボブ・ハリス。このメロハー・マニアからの信頼篤い職人2人のキャリアの出発点となったアメリカのバンド、BOULDERが米メジャーのELEKTRA RECORDSに'79年に残した唯一のフル・アルバム。先日中古盤屋を回遊していたら本作の帯付CDを発見して「こんなん発売されてたのか、知らんかった!」と思わず衝動買いしてしまいましたよ。まぁ実際は輸入盤に帯と解説が付属しているだけだったのですが、それでも謎多きバンドの一端を知ることが出来たので、ありがてぇありがてぇ。 ちなみにスタン・ブッシュは、本作にはフロンロマンではなくギタリストとして参加しており、曲作りにはほぼノータッチ。そのせいか、BOSTON辺りを天日干しして湿り気をさっぱり蒸発させてしまったような、少々時代を感じさせるハードポップ・サウンドに抒情性やドラマ性の類は希薄です。スタンのソロ作や、ボブ・ハリスが関与してきたバンドに通じるような「哀愁のメロハー」路線を期待すると肩透かしを食らうので注意が必要なものの、神秘的なイントロに期待で鼻の孔が広がる、本作収録曲の中では例外的にプログレ・ハードっぽい雰囲気漂わす①(ウォーレン・ジヴォンのカヴァー)や、ハーモニーが美しいオシャレな②、ピアノが楽し気に踊る④とかは、これはこれで良い曲。ノリ良く軽快な楽曲と、タイトな収録時間の合わせ技で気楽に聴き返せる、肩の凝らない構成も美点ではないかと。 資料的価値も見いだせるマニア向けの1枚ですが、質は十分高いと思いますよ。