ラス・バラード(Vo)というと、ミュージシャンとしてよりも、RAINBOWがカヴァーした“SINCE YOU BEEN GONE”や“I SURRENDER”等のヒット曲の作者(ソングライター)としての印象が強いのですが、実際は70年代半ばからソロ・キャリアを歩み始めた実績の持ち主。大きなヒットにこそ恵まれなかったものの優れたアルバムを残しており、本作は彼が’80年にリリースした4枚目のアルバムとなります。 自身の楽曲がHRシーンで好意的に受け入れられたことや、英国でのNWOBHMの盛り上がりに触発されたのか、「ラス・バラードご乱心?」と疑うぐらいB級メタル然としたアートワークと、Gリフ主導で走り始める曲調にグッと力の入ったラスのパワフルなシャウトが乗っかったOPナンバー①が物語る通り、ポップ寄りだった前3作に比べ、今回は(メロディのキャッチネスはしっかりと担保しつつ)大幅にハードネスとバンド・アンサンブルを強化。無論、キャリアのある御仁ゆえゴリゴリにヘヴィ・メタリックなサウンドというわけじゃありませんが、レゲエ調のヴァースから転調してシリアスなサビメロに雪崩込む③や、後にURIAH HEEPがカヴァーすることとなる④、重厚なムード漂わす⑥等は、HR/HMリスナーが聴いても素直にカッコ良いと思える仕上がり。その最たる例が、ブルース・ディッキンソン擁するSAMSONが3rd『魔界戦士』のOPナンバーに採用したシャープな疾走ナンバー⑧(その時の邦題は“地獄の天使”でしたっけね)だったんじゃないかと。 捨て曲なしの名盤であり、手持ちのラス・バラードのカタログの中では最も聴き返す頻度の高い1枚。紙ジャケ再発されていますので、入門盤としてもお薦めですよ。