ジャケットに書かれた「君炎」の漢字でお馴染み(どういう意味かは未だ不明のままですが)、GOTTHARD登場前はKROKUSと共にスイスを代表するHRバンドの一つだったCHINAが’88年にPHONOGRAM RECORDSから発表し、母国のアルバム・チャートでは最高第6位にランクインするヒットとなったデビュー作。ジャケットをオリジナルのシンプルなデザインからグループショットに差し替えてリリースされた国内盤の邦題は『ワン・ショット・トゥ・ザ・ハート』でした。 バンド名はこんなんですし、アルバム全体のイントロである序曲①でももろ中華風なメロディが奏でられていますが、曲名と曲調がKISS風な②以降にオリエンタルな要素はほぼゼロ。更に言うとそのサウンドはヨーロッパ的な暗さや重さとも無縁で、元気一杯に歌いまくるVoや、煌めくKeyといった快活なパフォーマンスに載せて繰り広げられるのは、寧ろアメリカに対する憧憬が強く迸る明るく健康的にハジけるポップ・メタルです。 高いヒット・ポテンシャルを秘めた③、爽快なHRチューン④、ハイトーンVoが映える⑦、哀愁の隠し味が効いた⑨、ゴキゲンにロックする⑩、フラッシーなGプレイに彩られた⑫等、フックを盛り込んだキャッチーなメロディや、思わず合唱を誘われるサビメロ作りの上手さは、流石「スイスのBON JOVI」と評されるだけのことはあるなぁと。特に日本のファンの間でも評判を呼んだという⑤は、欧州風味の湿り気とアメリカンなポップ・センスという、CHINAの個性サウンドが理想的な形で体現されたハードポップの名曲。 次作『SIGN OF THE SKY』(’90年)と甲乙つけ難い、CHINA入門盤にお薦めする1枚。