ジョン・アンダーソン似のVoの歌い回し、泣きや哀愁より上品なポップ・センスが強く出たメロディ、大作主義を志向しつつも、起承転結を有する構築感よりも感性の赴くままに膨らまされた「奔放さ」の方が支配的な曲展開等、さしてYESに詳しくない我が身ですら「あぁ、YESぽいなー」と感じられる要素がてんこ盛りに詰め込まれた、'76年発表のセルフ・タイトルのデビュー作。 個人的にYESは少々苦手としているのですが、にも関わらず本作を思いの外楽しむ事が出来たのは、リード楽器の役割を果たすB、よく歌うG、カラフルなKey、変拍子を絡めたリズム・ワークで長大な曲展開を支えるDsといった、高い演奏能力を有する楽器陣の存在のみならず、アメリカのバンドらしく全編を壮麗に彩る美しいボーカル・ハーモニーの存在と、プログレ・テイスト以上にポップな大衆性が重視された作風ゆえかな、と。(逆に本家YESファンやプログレ愛好家には物足りないか?) 特にOPナンバー“LADY OF THE LAKE”は、11分越えの大作曲ながらもどこか親しみ易い響きを湛えた、スペーシー且つドラマティックな曲展開が堪能できるバンドの代表曲の1つ。また、美しいアコギをフィーチュアしつつスリリングに展開していく“ELLIPTICAL SEASONS”、疾走感溢れる楽器陣のインタープレイが気持ち良い“FORCES”なんかも、このバンドが何者なのかを判り易く示してくれる逸品かと。 後の作品と比べると、70年代HR的なハードネスやダイナミズム(「若さの迸り」ともいう)も感じられ、漂って来る初々しい雰囲気が如何にもデビュー作らしくて好感が持てる1枚。